けら

たたらを踏み続けてしばらくすると、砂鉄から出た不純物“ノロ”が釜の中に溜まってきます。
ときどき釜の下のほうの取り出し口を開けると、真っ赤なノロがどろっと出てきて釜の中の温度を感じさせます。
そうして4時間くらい経ったころ、永田先生が様子をみて終了の合図をかけたたら踏みをやめて釜を崩します。
ものすごい温度の空気が釜の中から出てきて工房全体を包みました。
そして取り出された鉄の塊。

たたら製鉄でできあがった鉄は“金”ヘンに“母”と書いて“けら”といいます。


まるでいきさつを知らないで見たら、ただの鉄くずに見えるかもしれません。
しかし、私には砂鉄を集め、炭を焼き、たたらを踏んだみんなのエネルギーと、火のエネルギーを内に秘めた力強い塊に見えました。

ほぼ丸一日間、四回の釜出しをして、四つの“けら”ができました。


サイズはそれぞれ縦約15cm、横約20cm、奥行き約15cmくらい。
重さにして合計約5kg。
多いのか、少ないのか。
炭焼きに使った3トンの赤松から考えると、人間が鉄を作るためにどれだけの木を使ってきたのかを考えさせられました。